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  「秘密」シリーズ「事実と真実」

 
たとえば。自分以外の人の視界を全て見れたとしても。
どんなにその人の視界がだぶり、何をどう見たかわかっても。
その人の気持ちが100%判るわけではない。
たとえ判ったとしても、何をその人が見たかという、事実だけだ。真実ではない。
いくら状況証拠があっても。残された何を見ても。
それは憶測や推測だ。たとえ証拠があっても、100%真実ではない。
「人の脳を見ただけで、心まで伝染りはしない。
 死んだ人の心は死んだ人のものだ(「秘密・1」P208)」。
秘密シリーズはそれを貫き通している。
「真実はいつもひとつ?
私はそうは思えない。
形のない、言葉では言えないもの。数えることすらできないもの。
 
「MRIスキャナ」という発想を持ちながら、その精度を上げながら、
でもMRIスキャナは「完全」ではないし、
第九の捜査陣も完璧ではない。(青木、薪を含めて。)
 
「僕達の仕事は、そういった脳を毎日毎日見続け、
 その中なら少ない真実を拾いあつめることだ(「秘密・1」P108)」
 その描き方が、視点がすごいなと私は思う。
 
「秘密」シリーズは、清水先生が開拓していったシリーズだ。
他の清水作品とくらべ、かなり異色。
現在4作まで発表されているが、毎年グレードUPしていると思う。
短いP数でこれでもかという中身の濃い作品である。
年一作、ターゲット層の高い「メロディ」に発表というのもよかったのだろう。
(というか、ララに乗せても違和感ありそう。)
「秘密2003」にいたっては、もう、神業。
 
秘密。人の心。人の見たもの。
追い求めてはいても、けれど決して同じものではない。
「秘密2003」にいたっては、第九がMRI捜査をすることの、
プライバシーや倫理的追及を、作中のキャラたちが語っている気がした。
「誰にその権利がある?」
MRI捜査の限界、そして広がる可能性。
第九の存在。
 
本当にすごいマンガだと思った。中身濃いし。
 
物言えぬ人になった人の視界をめぐる物語。
誰にも見られたくなかった秘密。
タブーがあるがゆえ、数々の問いかけを残す。「真実とは?」
 

 
(この文は「秘密・2巻」及びメロディ03年7月号の「秘密特別編」を読む前に書きました)
 

清水玲子「秘密−トップ・シークレット−」
1巻&2巻
(A5版・ジエッツコミックス。)
月刊「メロディ」掲載
 
2003.6/27(金)

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