【月夜水の詩】HOME > 清水玲子の本について > 白泉社文庫 『天使たちの進化論』
 

 

ジャック&エレナシリーズ

 

 『月下美人』

【あらすじ】
 
女と子供のキライなロボットのエレナは、
探偵業のジャックの代理で、
モデルのアマンダのボディガードになる。
口げんかが絶えず、お互い気のあわないエレナとアマンダ。
でもアマンダは明らかに誰かに狙われているようで‥‥‥。
 
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【 感想】
 
「月下美人」というのは、モデルのアマンダのことだろうか。
アマンダにとっては年がかさみ、若くなくなっていく自分が
枯れていく花のように思える。
でも、どんなに美しくても、造りものでしかないロボットのエレナにとっては、
「造りものの花なんかより、生きてすぐ枯れちゃう花のほうが、
ずっとキレイだよ(文庫『天使たちの進化論』P220」より)」
 
エレナにとって、(口げんかばかりしていても、)
必死に生きているアマンダは
「何よりも誰よりも永遠に美しいと思ったんだ(P222)」
気の強いアマンダは、『月の子』のホリーの原型だろうか。

(2003.11/3)
   
初出/1988年6月
清水玲子 白泉社文庫『天使たちの進化論』もしくは
花とゆめコミックス『天使たちの進化論』 に収録

 
 

 『千の夜』

【あらすじ】
 
この話は、エレナの数十年前の回想から始まる。
未開の地。生きるか死ぬかという惑星アデレードで、
孤児になった子供を育てる“ヘルパー”として
仕事をしていたロボットのエレナ。
 
IQ300の天才だが体が弱い少女、カナエの担当になったエレナだが、
カナエは10才にならないうちに死んでしまう。
せめてもっと自由にさせてあげたかったと、後悔するエレナ。
 
そして数年後。エレナは同じくアデレード出身の
IQ300の、ジェームス・フィデリオという青年に出会う。
 
お互いに出会ったことがあるような気がするが‥‥。
 
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【感想】
 
最近まで気がつかなかったが、「『輝夜姫』に通じる物語」かもと思いました。
もう少しページ数があれば、
『MAGIC』なみにに大作になったかもしれない。
切なさが残って。わりと好きな物語です。
 
この頃のエレナは両性具有だったのかな。
胸あるように見えてしょうがないのですが。(服のせいでか。)
(『竜の眠る星』参照。)
 
この作品ではエレナが、「女と子供が苦手」という設定
(たとえばモニークのときのような)は、無視されています。

(2003.11/3)
   
初出/1989年夏
清水玲子 白泉社文庫『天使たちの進化論』もしくは
花とゆめコミックス『天使たちの進化論』 に収録)


 

 『天使たちの進化論』

【あらすじ】
 
春。子供の産めないロボットのエレナはユウウツだ。
今年の春は、猫たちだけでなく、
オランウータンのアイコちゃん、人間の友人のルイスまで妊娠して。
 
「人間はどんどんかわっていく。
昨日と全く顔で今日を迎える人は誰一人としていない。
みんなどんどん進化していってしまう。
なのにオレはいつまでたっても200年前と同じ顔なんだ(P147)」
 
ではロボットには何が出来る?
 
現在最後に発表されたジャック&エレナシリーズです。
 
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【感想】
 
『月の子』連載中に発表された作品。
エレナはユウウツだ。
自分だけ、変れないようで。
おいていかれるようで。
「おまえはその人間が夢にまでみた理想のロボットなんだぞ(P72)」
「でも、子孫の残せないオレ達に一体何が残せる(P73)」
ロボットのすべきことは? 何が出来るのか。
人間でも事情があって子供が産めない人や、
子孫が残せない人はたくさんいる。
だから、そんなに嘆かないで。
私には永遠に美しいエレナがうらやましいですけどね。
つくりもの、か。
『月下美人』でもそう言ってましたよね。
エレナの目に世界はどううつっているのだろう。
(透視能力という意味ではなく。)
13年前に描かれた、ロボットの物語です。

 (2003.11/3)
   
初出/1990年秋
(清水玲子『天使たちの進化論』白泉社文庫もしくは
『天使たちの進化論』花とゆめコミックスに収録)

 

『ミルキーウェイ』『ミルキーウェイ2』
『竜の眠る星』全2巻
『月下美人』『千の夜』 『天使たちの進化論 』

 

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