「ベンジャミン(ジミー) 」


 「月の子」連載当時、「女性化」とかいうのを本格的に扱ったマンガって、有名なのは「月の子」と「アニマルX」くらいだったと思う。
 この2作が現在の少女マンガ(やおい含む)の「女性化ブーム」の先がけだったと思う。
 「アニマルX」は男が女になる話ですが、男臭くてやおいでホモ色強くて苦手なんだけど、「月の子」は好きです。
 
  
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 その当時の世相では、いきなりティルトとセツとショナの3人の話だと(当時、ノーマル誌だったLaLaでは)、キツイし、わかりづらかったろうね。
 だから、わかりやすいジミーがいて正解だったと思う。
 忘れられているようだが、幼魚のジミーも中性体なんだよ(笑)。
 子供になったり、大人の女性体になったり。
 そしてジミーが死ねば、未成魚だったセツが女性化できる。絶妙な設定。
 
 ジミーとアートは純粋でいいよね。
 ジミーもつらかったと思うよ。
 たった3人きりのきょうだいなのに、ティルトはセツばかりかまうし、セツが全てだし、セツもひいきしているわけではないけど、ティルトと過ごした時間のほうがずっと長いから、ティルトと仲がいい。(ジミー病弱で寝込んでたし。)
 だから、忘れたかったのかな、全てを。
 そんな風に思ってしまう。
 人魚として生きてるっていっても、元々3つ子は人魚と人間のハーフだし。単にジミーは人間として生きることを選んだにすぎないのかもしれないし。
 唯一かまってくれたアートから引き離されたくない。
 ショナは大切にはしてくれるけど、ジミーにとって居心地悪い扱いしかしてくれない。
 
 ジミーはアートが全て。
 アートも、ひたすらに自分を求めるジミーが大切。
 
 恋とか男とか女とかカンケイない(むしろジミーを女の子と意識する前の)アートとジミー、いいなぁ。
 
 月の子は暗示に満ちた物語だ。
 セイラの子が3人いるのに、ベンジャミンにしか注意を向けなかったグラン・マやショナや人魚たち。むしろ危険なのは、ティルトやセツのほうなのに。
 コミックス3巻P167(文庫版2巻P215)のグラン・マの夢に出てきた「裏切り者のセイラの子供」は、ティルトなのか、セツなのかは分からない。が、それでもベンジャミンのみを問題とされる。「人間に近づく」から。
(グラン・マがどうしてロシア行きのチケットをセツに渡したのか、その時の状況を私は知りたくてたまらなない。セイラの子。未成魚。一度死んだ者。)
 
 ティルトの計画を知っても、それを独りでしょいこんだジミー。ティルトに独り立ち向かっていこうとするが、はばまれる。
 アート(人間)を愛した自分が悪い。
 原因がティルトと知っても、セツにすらそれを告げず。
 自分が死ねば全てはおさまると、自分を殺そうと、魔女の役をかってでる。
 全ての責任をとろうと。
 それが最善の方法とは言えないだろう。
 でも、全ての罪をかぶってもいいという、ジミーの覚悟が好きだ。

 

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