『竜の眠る星』の超高性能ロボットエレナは、天使と魔物、両面の顔を持つ。
透視、並はずれた腕力と聴力、動物との会話能力、セクスレスの美貌、頭脳。
元は200年前につくられたけれど、再生されるたび、最新のロボットに変化し続け。
人間に利用されるロボット。
ロボットに人権はない。
追いつめられたエレナは、「だから何だよ。人間なんてくさる程いるじゃないか」(『竜の眠る星』文庫1巻P130・HC1巻P130)
純粋すぎる彼(彼女)剣のような心。
「「王」と「王女」と「セレツネワ」この3つに近づくな、エレナ。」
でも、エレナとジャックは、 「来て」しまった。
惑星「竜星王(セレツネワ)」に来た時から、エレナの「閉じこめた記憶」は、目覚めはじめた。
生きていくために「記憶を殺す=消去する」そうしないと生きていけないエレナ。そうプログラムされたエレナ。思い出すと生きていけない程、つらい記憶、あがなえぬ罪。
消去するか、それとも何百年も何百年も、クリアな記憶を持ち続けるか。
16年前、殺人ロボットに作りかえられたエレナは、「どんなに人を殺しても全て忘れるように」されてしまった。(『竜の眠る星』文庫1巻P344・HC2巻P12)
そして人間の言うがまま人を殺し続け。
それも今は消去されている。暴かれていく過去。
それはエレナの望みではなかったのに。
「ふしぎだ。こんなに泣いているのにどうして涙が涸れないんだろう。
あ、そうか。
涙はたまり 気体となり、それをまたオレの体が吸収しているんだ。
くりかえし、くりかえし。
涙は涸れることがない。いつまでも。いつまでも。いつまでも」
(『竜の眠る星』文庫1巻P374・HC3巻P42)
人の寿命をはるかに超えて生きる。
人によってつくられた、人と同じ心をもった、機械(モノ)。
切なくて、痛い。
(初出/1986年9月〜1988年3月)
清水玲子 白泉社文庫『竜の眠る星』全2巻 もしくは
花とゆめコミックス『竜の眠る星』全5巻 より
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