『WILD CATS(1)』
清水玲子/花とゆめコミックス
「WILD CATS」「WILD CATS 2.」「秘密―トップ・シークレット―」の3つの短編が収録されたこのコミックスは、清水コミックスの中でもかなりの異色作ぞろいではないだろうか。
「犬や猫になりたかったライオンの話」
「WILD CATS 1」
(花とゆめコミックス『WILD CATS(1)』に収録)
「気がついた時は、捨てられていた。」
龍一に猫とまちがわれ拾われた仔ライオンのシーザー。大きく大きく育った彼女はドジで気弱なライオンに育ってしまい……。犬のイチローを尊敬し、犬や猫のまねして吠えるシーザーを「情けない」と嘆く龍一なのですが……。
野生で、肉食のライオン。もし、この日本で、龍一のそばで、狩りをしたら……?
果たしてライオンと人間は共存できるのか? そして、本当の「強さ」とは?
リアルで美しくかわいい動物たち(犬・猫・ライオン・鳥 etc…)は必見。そしてこの(1の)テーマはとりわけ好きです。もうこの龍一君の決めゼリフ、たくさんの人に聞いて欲しい。幸せになれるシリーズです。
まだコミックス化されてない(ちょっぴり切なくて甘い)「WILD CATS・3」もいいです。コミックス化は当分先ですが。
「ずっとずっと一緒だよ」
「WILD CATS 2」
(花とゆめコミックス『WILD CATS(1)』に収録)
まだ幼かった頃、龍一とシーザーが出会った、子犬のトングのお話。一見ひねて大人びて、でも寂しがりやの彼。
何がすごいかっていうと、 シーザーのナレーション(?)はあっても、トングにはセリフがない。目で、仕草で語るのだ。とにかくかわいい。マンガならではの表現力。絵が上手いっていいですよねえ。
寝顔もいいけど、牛柄のジャンプスーツ姿が特に好き(おまけにトング本人が、それをいやがっているところも……)。
「心の奥底があばかれる未来……」
「秘密―トップ・シークレット―」(1999版)
(花とゆめコミックス『WILD CATS(1)』に収録)
2055年。アメリカ大統領、ジョン・B・リードは、謎の死を遂げる。しかし証拠はあがらない。知っているのは、大統領の、『脳』だけ。
そして大統領の「見て」いたもの(つまり、視覚)は、すべて暴露されていく……。
『月刊メロディ』に掲載された異色作。何と主役は死んだおっさんなのだ! しかも××……。
これはもう少女漫画の域こえてます。大人の男性にも十分見ごたえのあるものだと思います。
私はやっぱり……自分の心や自分の見たものは、やっぱり墓場にもっていきたいですね。誰にだってのぞかれたくない、心の奥底に閉じ込めてある『トップ・シークレット』はあると思います。
傑作です。
(2001年)
|