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月の子総論 序.問い
『月の子』は悲しいハッピーエンドなんだけれど、 そのキャラたちの願いだけは叶って。でも悲劇で。 それを幸せととるか不幸ととるかは、読者自身にゆだねられていて。 人の「幸・不幸」は、一人称になってしまうことも多いと思うんです。 まわりからどれほどかわいそうでも、その人が幸せなら幸せ。 どんなに人のうらやむ立場でも、その人が不幸なら不幸。 普通のマンガはそれを作者が読者に、明確に書くんだろうけれど、 清水先生はストーリーとキャラだけ書いて、あとは読者にゆだねてる。 『輝夜姫』の「桂」は不幸な死にかたをしたけれど、 桂に楓という存在がいて幸せだったろうし、 楓がいつも覚えてくれていて幸せだったろうし、 楓は自分なりの答を持って、桂の元に帰れた。 幸せってものは、本人にしかわからない。 そこを読者にゆだねているから、ただの悲劇じゃなくて、 含みが出てくる。 キャラの選択を答にしてないんですよ、多分。 むしろそのキャラの問題点に突っかかってくるのを 予測している気がする。待っている気がする。 キャラ=作者ではなくて、問いかけのテーマを求めているのだと思う。 読者の答を求めてる。で、読者の批判にも負けてない。 そこに居続けて、描き続ける。
(2006.1/15)
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『月の子−MOON CHILD−』 清水玲子 花とゆめコミックス全13巻/白泉社文庫全8巻
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