ティルトとリタの歪んだ愛
(「月の子」より)
ティルトは、本当にリタを愛していなかったんだろうか。
結局ティルトが最後まで意地を張り通したので、
どちらとも断言できないのだけれど。
では、リタは、ティルトにとってただの邪魔者だったのか。
ティルトにとってリタは、
ジミーとセツ、そしてアートとショナ、あとは母親たち以外で
唯一、(愛であれ憎しみであれ)関心を持った人なのだ。
本当にパーフェクトな計画を立てるのなら、
ティルトがリタを殺すのは、彼にとって造作もなかったことだろう。
けれど、ティルトはリタを「投獄」という手段でキエフから逃がした。
何故?
ティルトは何をおそれていたのだろう。
自分が人間なんかに惹かれてしまうことに?
セツ以外の人を愛してしまうことに?
ただ一つだけ言えることは。
リタはセツ以外ではただ1人、
ティルトを理解しようとした人だということ。
それが思いこみでなんであれ。
「あなたが悪いことをして…苦しい思いをするのは‥‥‥私は嫌です」
「あなたが自分で自分を傷つけているようで見ているのが‥‥‥」
でも、リタなんかに・・・人間なんかに心を見透かされてしまうのは
ティルトの心が許さない。悲しいね。
結局ティルトとリタの愛は歪んだままだった。
けれど、ティルトは、本当は、殺されてでも、
誰かに止めて欲しかったのではないかと、私は思います。
(結果はかえって悪化させたにしろ。)
そして、ティルトは、一番言って欲しかった言葉を、
リタに言ってもらえたような気がする。
転生って、私は信じないけれど、ティルトの件だけは、
転生であって欲しいと、私は思ってしまうのです。
ただ、せめてリタぐらいは、「ティルト」の存在を知っていて
欲しかったです。やりきれない。
「ティルト」って呼んであげて欲しかった。
だからティルトはリタに心を開けなかったのかな。
リタが「ギル」を好きと知っていたから・・・。
この計画を守るために、自分が「ティルト」と知られるわけには
いかなかったし。
ティルトは、一途で、切ない。
意志が強くて。独りで全てを飲み込んで。
誰にも何も弁解しなかった。もちろん、セツにも‥‥‥。
ただリタが、ティルトの魂を救ってくれたら良かったのに‥‥‥。
残酷な童話。
リタを許せないというティルト派は多いけれど、
ティルトとリタの愛、私は結構好きです。
(リタギライ多いですけど。私はリタが好き。
高力士はすっごく嫌なんですけれど。)
2001 2/19