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薪室長の魅力


薪さん・・・・・・いえ、清水玲子キャラの魅力は、
そこに暗示に導きされた、妄想、があるからだと思う。
うちのランキングも、皆さん、暴走するほど妄想している、
それだけ含みを持たせた世界を、読者が持てる。
 
暗示、伏線、そういったものがすごい。
ひとつのことを語るのに、幾重にも、含みがある。
 
 
薪さんも、ただキレイだとか危ういだけでなく、
人の弱さに、ただ闇や悪ぶるのではなく、まっすぐで、どこかまじめで、
それを捨てきれない、
必死に自分の道を求めることを願う、
そういう面があるのだと思う。
 
 
人の「秘密」を暴くことに、
自分の「秘密」も死後も守りたいと願ってしまうのさえ自分には許されない。
暴くことが正しいとは限らない、ただ、自分の出来ることを尽くしていても、
自分の「第九の室長」という権力で、独断で「秘密」を握りつぶしてしまう。
知ってしまっても、それが正しかろうが、間違いだとしても、
「公開するしか選択肢はない」場合も幾度もあり。
「第九」そのものが、世間にバッシングをうけて、その頂点として、
いやがらせを受けても、だれにも愚痴ることも、泣き言も許されず。
「第九」を護りたくても、ただ有能なだけで無力で、
それでも「第九」の室長から逃げることも出来ず。
知ってしまった「秘密」をただ受け止め、口外できず。
 
 
本当は誰よりも痛みに敏感でも、自分にも他人にも、厳しくすることしか出来ず、
殉職していく部下がいても、泣き苦しむ部下がいても、それでも、
「第九」に未来を願って。
 
 
薪さんはなんて、魅力的なのだろう。
残酷なほど、キレイ。
 
 
 
そして。
鈴木が自分のため、薪に撃たれて命を落とそうとし、
ただ、正当防衛と思い撃ち殺し、
ずっとあとになって、真実を知ってしまって、
自分のために、鈴木が死んだことを知って。
 
 
それはただの後悔や懺悔だろうか?
ただそれだけだろうか。
ましてや鈴木が付き合っていた女性がいて、
そんな時に、自分を選んでくれた?鈴木を、
薪はどう思ったろう。
それは、薪の「秘密」中の「秘密」なのだと思う。
 
 
そして忠実だった部下、青木が、鈴木の元彼女に惹かれ、
自分より、彼女を選びだした。
 
 
 
幾重にも幾重にも旋律を奏でる思い。決してキレイなだけじゃないから、
死体が根元に埋まっている桜のように、美しいのだと思う。
 
 
だれにも助けを求めることも出来ず。
泣くことも逃げることさえ許されず。
彼は何を思い、「第九」の「室長」を続けるのか。

(2008年4月11日)


『秘密―トップ・シークレット―』清水玲子
白泉社ジェッツコミックスA5版1〜4巻 以下続刊/隔月刊『メロディ』掲載
 
 
掲載誌『メロディ』は偶数月末の28日に発売。白泉社。

 

 

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