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  「秘密1999」

 
 人は死してもなお、何かを残したいのだろうか。
 それとも、誰かに知られないまま墓場にもっていきたい「秘密」は、あるのだろうか。
 
 どちらも「真」だと私は思う。
 
 都合のいいこと、知って欲しいこと、伝えたいことは残して欲しいし、
知られたくない「秘密」もあるのだろう。
 
 ふつうの場合ならば、それは叶いやすいのだろう。なんらかの手段で「選べる」から。
 
 
 リード米大統領の殺害死。
 何故彼は死んだのか?
 それを知るために、『MRIスキャナー』で、生前の大統領の「見て」いた映像を「全て」スクリーンに映し出し、検証する。
 大統領のプライバシーなどおかまいなしに。捜査の名目のもとに。
「フロの中の夫婦の会話」も「トイレもベッドの中も」。
 
「正しい生き方。正しい人生。曲がったことを許さない、神父のような人」(コミックス1巻P28より)。
 そんな彼が命がけで守ろうとしたたったひとつの「秘密」はドロにまみれる。
 
「「秘密」は、必ず漏れる。口に出し、紙に書いた時点で「秘密」は「秘密」でなくなる」(コミックス1巻P34より)。
 
 そして「国家機密」のはずの大統領の情報は、マスコミに流れてしまう。
 
 
 清水先生のすごいところは、『MRIスキャナー』の機械に甘えず、酔わず、その結果の危険性、残酷さも書くところだ。
 
 
 あの世にもっていくはずだった、たったひとつの「秘密」。誰にも告げることのないはずだった、「秘密」。
 それなのに。
  
  
 『MRIスキャナー』のない時代に生まれて、本当に良かった。これからの「現実」は、どうなるかまでは、わからないけれども。

 

清水玲子「秘密−トップ・シークレット−」
(A5版・ジエッツコミックス。)
 
2002.7/3(水)

 

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