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 「輝夜姫」 『DONARと臓器移植』

 

 今はもう、臓器移植の時代になりましたね。臓器意思カードも流通している。
失明。臓器の異常。肉体の欠陥。肢体不自由。
それを乗り越えて生きている人もたくさんいるけれど、
やっぱり一部のそういう方々にとっては、臓器移植は、すごく求めているものなのでしょうね。
希望というか。
 
だから清水先生が、感情のままドナーの悲しみを描くのではなく、
ミラーさんとか、碧とかのケースも描いて下さってよかった。心底そう思います。
 
目が不自由なミラー。内蔵がガンでボロボロの碧。
そのふたりは臓器提供者(ドナー)ではなく、正確には、臓器受容者(レシピエント)なのだ。
 
衰弱し、吐血する碧。そんな彼に、どれだけ生きて欲しかったか。
 
視力のないミラーへ、余命幾ばくかのジュリアンはミラーに
眼を受け渡すために、命をかけて、そして、死ぬ。
 
ジュリアンが命をかけて、ミラーに目をあげて、ミラーもジュリアンを愛している、
そういうのも清水先生は描いて下さった。
 
一時、私が輝夜好きなのって、たくさんの移植希望者に対して酷いことだろうかと、悩みまくりました。
でも。 肉体のスペアとしてのクローンとか、胎児細胞とかを使うのは、絶対にいけないこと。
自分の体を困っている人にあげるのと、スペアとして殺すために命をつくることは、「別」だと、私は思います。
 
清水先生は、今まで目をつぶっていたことをあばきだす。
 
 
胎児細胞を摘出するために、強制的に妊娠させて、強制的に中絶させられる李家の孤児院の子供たち。
  
「血液は「人間」にはならないし、何回とってもその人の「身体」も「精神」も傷つかないわ」
 
晶の戦っているものはあまりにも大きい。
そして、ロシアの施設の現状。
 
今の清水先生は、断定的でなく、いろんな視点で作品を描いていらっしゃる。そういう清水先生が好きです。
嘆きを見ないふりをする。それはカンタンなことです。でも、先生ご自身、戦っている。
 
 
全てを乗り越えた、そういう結末を、私は望みます。

(2001年)

「輝夜姫」清水玲子 花とゆめコミックス
     1〜16以下続刊

 

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