【月夜水の詩】HOME > 清水玲子の本について > 清水玲子の作品世界』 その1(代表作3作)
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――清水玲子の作品世界。――

 

1−A 「大切な人」

 

『ミルキーウェイ』――ジャック&エレナシリーズ

清水玲子先生の描いたキャラに、ロボットのエレナ(セクスレスです)というキャラがいる。彼(彼女)は最愛の人だった人の、妻に言われる。
 
「ロボットに恋愛は無理よ。人間は寿命があって死んでしまう。子孫を残さなくてはいけないから、男と女があって恋愛があるの。
 
でも機械(ロボット)は――死なないし男も女もない。たとえ死んでも、自分を再生することができるし、子孫を残す必要がない。一人で『完全体』のくせに。宇宙にたった一人残されたって永遠に生きる機械(ロボット)に、伴侶なんか、必要ないでしょう?」

  

『月の子 ―MOON CHILD―』

清水先生って、中性は恋愛ができないのか、っていうテーマを、いちはやく描いた方なのよね。(いえ、答えはそこで終わっていませんが。)
 
 『月の子』の、ティルトは、身体的欠陥があり、男でも女でもない未成魚として生まれた。人魚って、数百年の命だけど、恋をするのは、地球に帰ってきた秋から翌年の春まで。春には死んでしまうという種族。
 
ティルトは、自分が子孫が残せないためか、人魚でありたいと異様に願うのか、自分と同じ遺伝子を残したいという使命感が、強い人魚だった。
 
そして、三つ子のきょうだいの一人、セツを守ることしかできなくなった。セツのためなら何でもしてしまうようになった。  セツも同じ未成魚だけど、セツの場合は、女性化する可能性のある未成魚なのね。(その条件が、きょうだいのベンジャミンの死という、無茶なものだけど。) 子孫を残すことに、ティルトほど脅迫的でない。(とてもとても傷ついてるけど。)
 
セツはティルトのことをとても愛していたけれど、セツにとってティルトは、自分の分身だった。きょうだい――肉親だった。
 
だからティルトの前では一番無防備になる。その代わり、ティルトに恋はできない。
 
ティルトとセツを見てると、痛くなる。とても。

 

『輝夜姫(かぐやひめ)』

今、清水先生が描いている、『輝夜姫』は別のイミで面白い。同性、異性、友情、恋愛のはざまで。独占したいとか、ずっと一緒にいたいとか、思うわりには、友情か恋愛かなんて考えないまま、相手を求める。
 
晶(♀)が由(♂)を選んでも、まゆ(♀)を選んでも、そこで異性愛が上とか、同性愛が上とかの答えにはならないんじゃないかなぁ。晶が2人とも選んだり、2人とも捨てたりする可能性もあるし。
 
由だって、晶と、碧(♂)、どっちが大切なんだあ? 両方取るつもりか、 って奴だし。 クローンたちはクローンたちで、友情を越えた心のよりどころ として、互いを見るペアもありそうだし。
 
コミックス13巻のカエデとカツラのシーンなんて、涙すら出ないほどショックだった。
 
   「晶が死んだら私が死ぬわ」   まゆ 『輝夜姫 6巻』 
   「ずっとずっとずっと碧のそばにいたかった」 由 『輝夜姫 7巻』

1−B 「生命の重みと人の尊厳」

『ジャック&エレナシリーズ』

ロボットのエレナは、最愛の主人(人間)を失ってから、200年1人で生きてきた。
40回自殺をしても、全て、エレナがロボットであったため、再生され、未遂に終る。
そうしてエレナは、ロボットのジャックに出会う。ジャックになつき、ジャックなしではいられなくなる。
 
そんなエレナには残酷な機能がある。
自己防衛として、『有害で不必要な記憶を消してしまう』という。
 
「人間なら…死ぬか狂うかして逃げられるでしょうけれど、エレナの体は絶対に生き続ける。………そうなるともう、記憶を殺していく他ないんです。」
 
どんなに大切な記憶さえ。

 

『月の子 −MOON CHILD−』

『月の子』のセツは、地球の「毒」におかされる。セツはティルトのつくる薬を飲むのを拒否する。「ティルトが危険な海に行かないように」 「このまま自分が生きていれば、ティルトは自分ばかりかまって、守るべきベンジャミンを殺してしまうかもしれないから」
 
そうして生き絶えたセツを生き返らせるため、ティルトは魔女と契約する。
 
「セツを生き返らせる」ことと、「セツにショナの卵を生ませる」こととひきかえに「地球を滅ぼす」と。
セツは何も知らない。けれど、セツが生きていく限り、ティルトは魔女との約束を果たさなければならない。
 
たくさんのギセイとひきかえに。

 

『輝夜姫』

神淵島の孤児たちは、実は要人が肉体のスペアとしてつくったクローンだった。
クローンといっても、人工的に造った双子のようなものだ。(今実現しているクローン猿・クローン牛。)
 
そのドナーたちを、本体は、ねらう。  自分が生きるために、クローンを殺し、その臓器を、皮膚を、腕を足を、自分に移植するために。
 
 DEAD OR ALIVE。
 
人の命は、脳だけか? 腕や細胞には、意志はないのか?
そしてついには、胎児や、脳のないクローンも出てくる。
残酷に。
 
「私は玉鈴じゃない。岡田晶よ!」
「おしえてくれ。どうして、なぜオレ達は殺されなきゃならなかった。何のために。」
 
人権を剥奪されたクローンたちの戦いは、始まる。
(ドナー(臓器提供者)の人権という点では、『輝夜姫』は重いです。)

2001年)

 

  「ジャック&エレナシリーズ」には、
『ミルキーウェイ』『竜の眠る星・全5巻』
『天使たちの進化論』があります。(花とゆめコミックス)
( 白泉社文庫版に『ミルキーウェイ』『竜の眠る星(全2巻)』
         『天使たちの進化論』もあり。)

 
『月の子(全13巻)』花とゆめコミックス
   (白泉社文庫版『月の子(全8巻)』)

 
『輝夜姫・1〜17巻連載中』花とゆめコミックス

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