「MAGIC」――水の中の月――
「夜 地球の水面に映る月は すぐそこにあって まるで すくえそうだけど 決して触われないでしょう すくおうとすれば−−−− こわれてしまうわ」 (「MAGIC」より) 清水先生の作品は切ない。切なくて切なくて切なくて−−−−「痛い」。 テーマのためならどんな残酷なシーンも残酷な結末も 描いてしまうのが、清水玲子。 むしろハッピーエンドの作品のほうが、少ないのだ。 切なくて切なくて切なくて。透明で。 この「MAGIC」も。ふつうの作家だったなら、結局、2人の想いは通じるのでしょうね。 全てを乗り越えて2人は信じあい、結ばれる。 けれど清水玲子はそんなに甘くない。 「MAGIC」には、清水玲子のエッセンスが濃縮されていて、それでいて、さらりとしている。 この深い深いテーマに、どれだけの人がたどりつけるのか判らないけれど。 1.花七は育ての親トールを愛しているけれど、トールは花七の亡き母KANAを愛している。 2.花七はKANAとトールの間の実の娘である。 3.花七はKANAを愛しているトールを愛し、 トールもいつしか娘である花七を1人の女性として愛しはじめる。 これってすっごいタブーじゃないですか そしてその先は、清水先生ならではの展開を迎えていくのだが。 切ない。届かない。すくった瞬間に壊れてしまう月。 でも想いは永遠。「永遠」に続いていく。 「何度あなたに出会っても 私はあなたを愛するでしょう」 清水先生は、残酷なロマンチストだと思う。 今の「輝夜姫」とか「秘密−−トップシークレット−−」とかは、残酷なリアリストだけど。 こんなに残酷で切なくて美しい物語を描けるのは、清水先生だけだ。 短編の中では一番清水先生らしいカラーが出ているという点で、 私はこの本を押します。
(2001年)
「サイレント」
「月の子」の終了後から「輝夜姫」の連載開始の間に描かれた「パピヨン」と「サイレント」。 そのうちの「サイレント」のほうです。 死んだお兄さんのために独り、暴力団に銃を持って立ち向かう高校生って切ない−−。 この松沢碧君は、「輝夜姫」の碧の原型ですね。このときの彼は2の線いってたんですが。 どうでもいいけど、この(扉裏の)ラフスケッチに書いてある、 「松沢も晶」って、どういう意味? やっぱり晶と碧は元は同じキャラだったのか? 未だに謎である。
「MAGIC」「サイレント」共に 「MAGIC」清水玲子 花とゆめコミックス に収録
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