「らせん」
鼓動がきこえる。
あれは僕の音? 君の音?
肌に何かが触れる。
それは君の感触? 僕の感触?
目にうつるものは? 耳に届く音は?
わからない。今はもうわからない。
僕は誰? 君は誰?
君は僕? 僕は君じゃないのに?
重なってしまった僕ら。無理やり重ねられた僕ら。
僕と君は同じらせんを持つのに、
僕と君は分かたれて生まれ、
僕と君は別の人間として生きていたのに、
それなのに強引にひとつに重ねられた。
君のために僕は殺されてしまった。
甦(よみがえ)った僕の中で、君の声は消えた。
そして残されたのは、悲しみと憎しみ。
いくら甦っても、それはもう、
本来の僕ではない。
僕にはもう還らない。還ることは、ない。
そして君の肉体の中の僕の自我ははとり残され、
君でも僕でもない存在に成り果てた。
僕らの心はもう触れ合うこともなく。
僕は僕として生きたかった。
君を消し去りたくなんて、なかったのだ。
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