「存在理由。」
  
その愛は呪縛かもしれない。
その呪縛を、むしろ私は望む。
ただひとつの「生きる理由」として。
  
私が引き金を引いた瞬間に、
その時貴方の時は止まったから。
貴方の時の針は永遠に止まったから。
それを奪ったのは私だから。
  
貴方に返すものがないのならば、
私の未来の全てを捧ぐから。
 
ただ叶えたいのは貴方との約束。
「第九」の未来。
  
それが貴方の望みならば。
貴方の声はもう聞かない。
  
貴方の全てを覚えている。
貴方と巡った季節も全て覚えている。
ただ居ないのは、貴方の存在。
ただ帰ることのないのは、貴方の存在。
   
貴方への償いを、永遠に魂に刻む。
貴方の存在を、魂に永遠に刻む。
もう死ぬことさえ許されないのだから、
ただひとつ、貴方が願った未来を、叶えたい。
   
「すごいよな、「第九」だぜ」
   
その望みを、それだけは、叶えたい。
失った部下たちが歩むはずだった、
笑い希望に満ちたはずの未来。
私さえ間違わなかったらあったはずの未来。
いつかその日が来るためならば。
その日が来るためならば、
この体を全てあげるから。
死んでもいい体を。
死ぬことさえ許されない体を。ただ、貴方に。
  
それが唯一、私の生きる意味。
――――存在理由。
  
  
ただ、私の魂に深く刻んで。
  
               (『秘密―トップ・シークレット―』薪剛)
 

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