青木の前で、苦しみに耐える薪さん。
この人はどれだけ、このフラッシュバックに、耐えてきただろう。
自分のせいで、大切な人を自ら殺したことを。
ただ人を殺すだけでも罪重いのに。正当防衛ではなかったのに。
まだ薪さんは、青木に甘えるほど、心を許してはいないのだ。
もちろんおそらく今井や宇野、曽我、小池にはそれ以上に。
もしかしたら、岡部さんだけが知っていたのかもね。
だから、岡部さんは、青木に妬いているのかも。
追い抜かれ、ぬけがけされそうで。
逢いたい人に逢えないのはつらいことなのだ。
それが、自分のために相手が全てを失ったら、
残された者は、どうすればいいのだろう。
人は、どうでもいい人のためには、自己犠牲出来ない。
それは相手にとっても自分にとっても無意味だから。
でも、大切な存在のために、自己犠牲されたら。
鈴木さんは満足かもしれない。
でも、残された薪さんは?
美しいとか、きれいだとか、そんな言葉では語れない。
それでも生きる。
たとえ闇に心が向きかけても、それでも現実と戦いつづける。
抱きしめて欲しい。
迎えに来て欲しい。
その願いが永遠に叶わなくても。逃げない強さを。
(2006年9月10日)