清水先生が繰り返し描く、自己犠牲。
その解釈が、作者も作品も読者も、
きれいに螺旋(らせん)を描いていく。
上へ、上へ。
昔はただ、キレイなものだった。
美しく、切ない。
自分より、他のものを優先する。
そのために、自己を犠牲にしたり、死を選んだりする。
それは、若干、美化されたものだったように、今は思える。
残酷に、残された者。今はそう思える。
『月の子』で、セツの死に残されて嘆き、悲劇の道を選んだティルト。
そのあたりから、残されたものの嘆き、犠牲をふんだんに使いだした。
ティルトの自己犠牲も、よく考えると、彼の自己満足ですが。
『輝夜姫』でも、自分の命より、大切なものを守ろうとし、
何度も死にかけた碧とか。
碧に関しては、残されたものの悲しみ、苦難等、
いっぱい盛り込んでいる。
彼は強くて弱いのか。弱くて強いのか。
そんな碧も、いや、そうだからこそ、碧が大好きですが。
『秘密2001』の鈴木もそう。
残された薪さん。薪さんに自分を殺させた鈴木のしたことの結果は、
おそらく「薪さん」をまわりに人殺しと思わせたろう。
それでも、独りで、生きてきた薪さん。
けれど、やっとであった青木まで、
自己犠牲をしてしまう人だった。
きれいにらせんを描くテーマ。
上へ、上へ。どこまでいくのだろう。
『メロディ』2007年8月号のP64・65の薪さんのセリフ。
この言葉に、しびれた。
清水作品は、どこまで高みに上るのだろう。
過去がないと、今がないと描けないテーマ。
「変わりたい、変わることに意味がある」と、
インタビューに何度も答える清水先生。
私も、多分、変わった。変わることが出来た。
清水作品に感動したから。変わろうと思った。きっと、変わった。
きれいならせんを描いて。
(2007年7月9日)
『月の子−MOON CHILD−』 清水玲子
花とゆめコミックス全13巻/ 白泉社文庫版全8巻
『輝夜姫』 清水玲子
花とゆめコミックス全27巻/白泉社文庫全14巻(予定)
『 秘密―トップ・シークレット―』 清水玲子
白泉社ジェッツコミックス(A5版)/1〜3巻以下続刊
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