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       つらい現実から真実から薪を守ろうとして、命を落とした鈴木。 
        つらい現実を薪に突きつけ、薪に真実を見せた青木。 
        どちらが正しかったのかはわからない。 
        結果論でしかないから。 
        薪を強いとあこがれた青木のやったことは、あまりにも荒療治で、 
        本作では薪は立ち直るが、 
        現実に薪の立場に状況にいる人が、 
        必ずしもそれで救われるとは限らない。 
        貝沼の狂気に落ちたかもしれない。 
        あるいは、4年前の薪には耐えられなかったかもしれない。 
        鈴木も青木も、どちらも、正しいとも間違っているとも言い切れないのだ。 
          
        薪を貝沼の狂気に引きずり込み、自分しか頭にないようにさせる。 
        自分のために狂わせる。自分のために壊れさせる。 
        自分のために自責の輪から抜け出せなくなるようにさせる。 
        自分のために自殺させる。 
        それが貝沼の目的だったかもしれない。 
        薪に強さを与えたのは、鈴木であり、青木であり、第九メンバーたち、 
        4年という年月だったのかもしれない。 
        完全に強い人なんていないのだ。人は強くて弱くて。 
        そんな『秘密』が好きだ。 
          
          
        青木が必死に現実と戦って、自分の真実と向き合って。 
        それでも青木が正しかったとは限らなかったりする。 
        そんな青木に、とても共感する。 
          
        薪を守ろうとして、薪に自分を殺させた鈴木は、 
        おろかかもしれない。残酷かもしれない。間違っていたかもしれない。 
        それでも薪が大切だったのだ。 
        そんな鈴木のやさしさももろさも弱さもあやまちも含めて好きだ。 
          
          
        メインキャストは正しくて、あるいは結果的に正しくて。 
        キャラの自己弁護、作者のキャラ弁護に終始するマンガは、 
        私はあまり好きにならない。 
        人はどんなにその人の正義を貫いたとしても 
        正しいとは限らないと知っているから。 
        テーマのためならキャラが正しいと言い切らせない。 
        そんな『秘密』が好きだ。 
          
        それゆえ清水キャラに共感できない人もいても。 
        現実は厳しいと思っている私は、 
        心地よく共感できるのだ。 
          
        人の弱さも強さも見せてくれる『秘密』。 
        弱いだけでも汚いだけでもなく、強さもある『秘密』が。 
      (2005.7/29) 
          
         
        「秘密―トップ・シークレット―」清水玲子 1〜2巻以下続刊 
        白泉社ジェッツコミックス(A5版) 
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