ティルト、君が大好き。
その弱さも強がりも、すべてを捨てて
ひとつのものを求める君も。
君のすべてが好きだよ。
永遠の子供の君が。
ティルトって、そんなに強い人じゃないよね。
たしかに賢くて行動力もあって。計画も練ることが出来た。
でも、「意志が強い」と「心が強い」は違うから。
自分はもう汚れてしまった。
誰か助けて。誰か守って。誰か救って。
それが叶わなかったから、セツを、
もうひとりの自分を、守った。
だから救いを求める。セツに。
それはおそろしく重い程の愛の渇き。
ティルトにとって、セツは、汚れなき天使だったから。
自分だけを愛してくれる、唯一の。
そうだね。ティルトに守られていた頃のセツは
天使だったのかもしれない。
でもショナに出会い、恋をして。
多分ティルトの求めていたセツではなくなってしまった。
自立しようとするセツ。
ティルトが居なくても、何とか生きていこうとするセツ。
そして、ティルトの求めていたセツではなくなってしまったのかもしれない。
だから君は苦しんだ。
それでもセツを求める。
そのことでしか存在意義をもてないから。
そして、セツを、理想化した。
それでも。
私はそんな君が好きだよ。
私には君の気持ちが良くわかる。
君は私だから。
私には君は救えないだろう。
でも、君を理解することは出来る。
それは私だけじゃない。
こんなにたくさんの人が、君を求めてる。
セツも、君も、不器用だったね。
すぐそばにいたのにね。
セツが君をおいて死ななければ、こんな悲劇にはならなかったのにね。
それはセツの罪。
君を暴走させたのはセツ。
そして君はベンジャミンに責任転嫁する。
「すべてはベンジャミンのせい。」
憎しみが君を支えていた。
セツにティルトを救って欲しかった。
本当にセツは「何も知らなかった」のか。
私には、13巻でセツが目を覚ました時、
「今‥‥へんなユメを」といった時、
すべてのことを夢として思い出したかのように見えたよ。
「だから」セツは壊れた。それは思い過ごしだろうか。
君のことが好きだって,
君のことが自分のように思えるって、
君は信じることが出来るのかな。
無理かもしれないね。
その代わり。
君の分も、私は生きていく。
君の涙も嘆きも叫びも哀しみも孤独も慟哭も。
ちゃんと受け止めて
君の分も、私は生きていく。
私は君のことを救えないかもしれない。
でも私は君に救われたんだよ。
私は確かに君に救われたんだ。
君が今安らかであることを、私は、ただ、祈る。
(2004.1/12)
「月の子−MOON CHILD−」清水玲子
花とゆめコミックス全13巻/ 白泉社文庫版全8巻 |