ティルトとセツを見ていると痛い。
ずっと2人だけの世界で生きてきたから。
大人(育ての親のサラとミラルダ)と病気がちのベンジャミン。
それを除くと、広い月で、たった2人。
ティルトのセツへの思いは契約。
セツのショナへの思いは契約の成立。
多分、3つ児にとって義理の母は『親』3つ児の兄弟は『自分自身』、
他は『他人』。
ショナがセツにとって『他人』であるということは、
ショナと初めて出会った時のセツの反応を見ると判る。
そして、セツのていねい語は、いつも『他人』に向けられる。
ある日、見知らぬ男が、自分の眠っているベットのわきにすわっていた。
見知らぬ男(ショナ)。
ティルトは−−いない。
初対面なのに妙に親切な他人。
セツはあきらかにおびえている。
なにしろセツが他人とティルト抜きで接触したのは、
おそらくこれが初めてであっただろうから。
ふとした誤解から、セツはショナの店に行き、
そのまま彼の優しさにひかれてしまう。
そして彼の思い人が兄弟のベンジャミンと知る。
私が思うには、セツのショナへのていねい語は、
『男扱いされたくない』という理由よりも、
単にショナが、セツにとって「『他人』だから」かも知れないと感じるのですが。
それをきっかけにセツは
ティルトとの2人きりの閉ざされた世界から自立していく。
何故ティルトが消えたのかも知らぬまま。
ティルトの苦しみ、なげき、悲しみは、はかりしれない。
そうして残酷な計画は始まっていく。自滅するかのように。
(2003.7/31)
「月の子−MOON CHILD−」
花とゆめコミックス全13巻
白泉社文庫版全8巻
清水玲子
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