【月夜水の詩】 > 清水玲子データベース > らせんのテーマ〜「記憶」〜
なぜ、『秘密』はこんなにもテーマにぶれがないのか。
それは、清水先生が、ベテランで、数多くの作品を、
描き続け、第一線に居続けた方だからだと思います。
『秘密』にはたくさんの清水先生の作品のテーマが眠ってる。
そして、いつも『秘密2001』を原点として深く掘り下げて。
原点回帰と深化をくりかえして。
そしてまた、清水先生は、
同じテーマを、同じ切り口や視点で語る方ではないんです。
これを、以前私は「らせんのテーマ」という風に書いたのですが、
当時の文とはちょっとニュアンスが変わってくると思うのですが、
これを、過去作品に触れることで、掘り下げてみようと思います。
『秘密』のテーマが「記憶」と聞いて、
すごく納得しました。
MRIの視界。そうですよね、記憶ですよね。
清水先生は、ずっと初期から、
記憶を失った者。
記憶の中にのみ存在する者。
決して忘れることの出来ない者。
そういう人を幾度もテーマにしてきました。
忘れてしまうことの残酷さ。悲しみ。
忘れることの出来ない苦悩。
それを冷酷なほど残酷に追求し、切なく描く。
そういう作風でした。
初期や中期は、忘れることの出来ない、いつまでも生き続ける者として、
ロボットをテーマにしました。
つらいことをそのまままともに受け止めて、
苦悩するキャラたちを描き続けました。
「ずっと、覚えているから」
「私の存在に気付いて」
「私の居たことを忘れないで」
切なく。残酷に。生々しく。そして、美しく。
どろどろとした人間ドラマを、独特の美意識で貫く。
非常に個性の際立った作風です。
そういうものは、好きな人ははまるけど、
そうでない人には、「もっと楽に生きれば?」と、
意味のないものかもしれません。
だから、清水作品は、好きな人には忘れられないほど惹かれるけど、
その重さが苦手だという人も多いでしょう。
好きなら読めばいいけど、そうでない人には勧めにくいですね。
ただ一度はまったら、何年たっても印象に残る、
好きだった作品と覚えている、そういう人も多いと、
ブログのレビューを読んでいて、感じました。
一時ものすごくはやってても忘れられるより、
こういう、深いテーマが私は好きだし、
『秘密』は新しいファン層も獲得したけど、
昔の清水ファンがかなり『秘密』で帰ってきてもいるのです。
『秘密』は、昔少女で今は大人になってしまった
元少女マンガファンのニーズに合致した、
『メロディ』(=大人になって読みたい 少女まんが誌)
のまんがの中でも、もっとも成功したまんがかもしれません。
【月詩Blog】2008.11.23 (Sun)より
2012年12月5日UP
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