特別な「月の子」

 

あ、ダメだ。
「月の子」を見るたび。読むたび。
私にとって、いかに「月の子」が特別なのか、思い知らされる。
これから先、どんなにすぐれたまんが家が、どんなにすばらしい作品を描こうとも。
たとえ清水先生が、「月の子」を超えた作品を描こうとも。
私にとって、「月の子」程、本能的に好きになれる作品は、ないんだな。
 
私は、確かに、あの時、いやされたんだ。
 
「月の子」を読むたび。私はどうしようのない、
切なさや、やさしさや、いとおしさや、
痛みや、おだやかさや、激しさの波に、ひたるのだ。
 
あれから何年もたつのに、
あれ程いやされた本はない。
ティルトに。そしてセツに。
 
そして、あのやるせのない切なさ、残酷さに、おぼれてしまう。
 
作品がすぐれているとか、完成度が高いとか、そういう次元を超えて。
私はただ、いやされたのだ。
ただの、「相性」だったのかも、しれない。
それでもきっとずっと一番。
 
ティルトというキャラが好き。
セツというキャラが好き。
すごく感情移入して。
 
叶わぬ夢。まっすぐさ。
それは確かに、私自身のものだったのだ。
 
何度もくりかえし、くりかえし。
私はその波にひたる。
 
私は確かに、いやされたのだ。

 

『月の子──MOON CHILD──』  
花とゆめコミックス 全13巻  
白泉社文庫版 全8巻  
清水玲子  

(2003.1/21)

  

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