「ショナ」


 「月の子」は最初数話で終わる予定の、3つ子中心のオムバニズム形式の話の予定だった、というのは、よく知られている事実である。
 第2話で、ショナをだした時点で、イメージが大きく膨らみ、大体のラストは決まり、それまでの中間の話はまだ決まっていなかった、というのも、よく知られている事実である。
 
 ショナはよく脇キャラで「竜の眠る星」とかにもちらっと登場した、清水先生の持ちキャラで、「1986年春」に発表された「ネオ・ドーベルマン」で主役になった。
 (「ネオ・ドーベルマン」【コミックス版「天女来襲」もしくは、文庫版「天使たちの進化論」に収録】) 
 
 人間とドーベルマンのキメラで双方に変身できるショナは、別の意味でも「月の子(人魚と人間のハーフで、幼魚&未成魚←→女性化する)」のベースになったのだろうが、このショナの登場で、「月の子」の5人(ティルト・セツ・ベンジャミン・アート・ショナ)の関係も、かなりできていたとおもわれる。
 
 「ネオ・ドーベルマン」のショナは、百合花の前でのみ人間の男に変身する、超色っぽいキャラだ。
 そしてメス犬とは別におつきあいをする。好きなのは百合花。でも百合花には手をださない。
 
  
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 「月の子」でショナが登場するのは、ユリカ(別惑星の異星人)との別れからだ。
  【コミックス1巻P52/文庫版1巻P56】
 ちょっとまて、異星人のユリカと、「いつか別れる(地球に帰る)」のがわかりきっていて、つきあっていたのか? 人魚としての自覚は? おいおい。
 ノエラとの関係もゆきずりっぽいし。
 それでセイラ(もしくはベンジャミンorセツ)の夢を見続けていたなんて、(「月の子」の)ユリカの立場ないじゃん。
  
 ショナが夢でずっと見続けていた女性。
 物語の中核になるはずなのに、セイラ(3つ子の母)なのか、ベンジャミンなのか、あるいはセツ(私はそう信じてる)なのか、はっきりしない。
 
 でも、わかるのは。ショナが女性化したベンジャミン(ジミー)に感じる違和感。「こうして欲しかったわけじゃないのに」「そう言いたかったわけじゃないのに」という期待を裏切られ、これは幼いジミーなんだと自覚する。
 
 おいおい。夢で見たのは本当にベンジャミンか? ふつう夢だとしぐさだとか表情とかも、夢に見ないか? その夢の中の女性にずっと何百年も憧れてたのなら、何でベンジャミン(ジミー)に違和感いだくんだ?
 
 あくまでもこれは私の仮説だが。
 ショナが夢見ていたのは、「女性化したセツ」なのではないだろうか?
 未成魚のセツは、「ショナがこうして欲しかった」ことをさらりと自覚なしにやってショナをドキリとさせる。
 ショナの求める理想の少女そのものだ、セツは。外見が少年であること以外は。
 
 そしてショナはベンジャミンを求めてしまう。
 理想の外見のベンジャミンを。
 夢に見続けているのはベンジャミン、ずっと想い続けてきたのはベンジャミンだと思って。あるいは「思いこんで」。
 
 果たして、ショナが生まれた600年前、3つ子は3人に分かれていたのか? 何百年も、分かれていなかったのでは?
 ショナが「稚魚」の頃より、大宇宙を泳いで旅立ち、帰って来る間も見続けた夢。その時3つ子は3人に分かれていたのか?
 
 3巻(文庫2巻)でショナに巻きつきからめとるのは、ベンジャミンではなく、セツだと、私は思うのだが。
 
 1〜3巻の「ショナの回想のベンジャミン」と、主に12巻(文庫版7・8巻)のセツが、同じ表情をしている気がするのは気のせいか?
 「月の子」は暗示に満ちた、万華鏡のような物語。数々の暗示、比喩がある。その幻惑にからみとられていく。
 
 ショナって、すっごく意地悪で無神経で自己中。
 コミックス8巻で【P38・もしくは文庫版5巻P126】
 「無神経なんかじゃない」って言ってるけど、セツは、そのベンジャミンがいるから女性化出来なくて、ベンジャミンを見守るだけの存在。なのにショナにひかれてしまって。そんなセツに、ショナの無神経、「ベンジャミンが好きだ、どうしよう」なんて言うか、フツー。
 「僕たちは(ベンジャミンは)ショナと一緒になるのが一番いいんだ」(コミックス3巻/文庫版2巻) そう言ってベンジャミンとショナが一緒になるべきなのにと、苦しみながらショナを愛するセツ。
 
 セツって本当にアンデルセンの「人魚姫」そのものだ。
 (ティルトこそ「人魚姫」、あるいはベンジャミンこそ「人魚姫」と様々に言われているが、私はセツが一番だと思う。3人ともその要素はあるが。みんな、アンデルセンの「人魚の姫」も読み返そう! 比較したら、面白くてはまるよ。)
 
 ショナはセツを愛しはじめる。いつしかベンジャミンよりも。
 でもセツは期待はしても信じてはいない。あたり前だ。
 ショナがどれだけベンジャミンを愛しているかを、一番思い知らされたのは、セツ自身だから。
 それにセツは「完全な女性体」じゃない。ベンジャミンが死なない限り、ショナの卵を産めるはず、ないのだ。
 
 ベンジャミンへのコンプレックスに傷つき続けるセツ。
 
 昔、私は「セツ×ショナ派」だった。
 でも今は完全に「ティルト×セツ派」。
 ショナってセツを傷つけ過ぎだよ。
 人として生きていこうと、セツを自立させて、恋をして美しくさせたたのはショナだけどさ。
 白い「雪」のセツを桜色に染めたのは。
 “桜の樹の下には屍体が埋まっている。”
 はらはらと散る、「滅びの花」に。

 

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