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文庫「天使たちの進化論」収録

 

 『もうひとつの神話

【あらすじ】
 
遠い未来。太陽が急激に収縮したため、地球は死滅。月面・火星基地も壊滅。木星の衛星エウロパ にいた数人の技師だけが助かった。彼らは最後の望みを、凍結した1つの受精卵に託して、宇宙にはなつことにした。
 
数体のロボットたちはその受精卵を守り続け。
150年後、解凍された受精卵から、イヴが生まれた。
 
そして、20年後。
イヴは一身にロボットたちの愛を受けて育ち。同じく20年前に作られた、ロボット のアダムをひたすら夫として愛し。
 
まわり全員がロボットとイヴは知らない。
そんなイヴは、アダムの子が欲しくて、想像妊娠をするのだが・・・。
 
   「でも決して 想像の子供は生まれない」
 
ひたすら人間(イヴ)を守り続けるロボットの、自己犠牲の物語。
 
清水先生の初期作品の中でも、私がとりわけ好きな作品です。 

 
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【 感想】
 
ロボットを愛するあまり、想像妊娠する。
切ないですよね。
 
ロボットのアダムは、いくらイヴを愛していても、「形だけの夫婦」でしかない(少なくともアダムはそう思っている)。ただ人を守るだけに存在するロボット。
 
ラストの展開は、本当にイヴの望みだったのだろうか? 
私にはそうは思えない。
けれど、私には、イヴはアダムたちのために「幸せなふり」をしているように見えてしょうがないのだ。
 
初期の清水作品の中では一番好きです。

(2001年)
   
初出/1985年3月
清水玲子 白泉社文庫「天使たちの進化論」より

 
 

 『ナポレオン・ソロ

【あらすじ】

まあるいまあるいロボットのナポレオン。
高性能で天才で、頑固で、バカ正直で。まっすぐなナポレオン。
 
そんなナポレオンとナンパロボット(ヒモ) カイとの出会い。
 
主人を小さな女の子の頃のまま忠実に愛し続け、幼い彼女の「私、ナポレオンのお嫁さんになったげる」という約束を信じ。
昔はやさしかった主人にうっとうしがられても。
「再生」(ロボットにとって殺されること)されそうになっても、ただ忠実に。
 
なのに彼女は・・・。
 
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【感想】
 
子供好きで、いくつになっても主人を子供の頃と同じく愛し続けるナポレオンは、純だなぁって思うけど、時間の進みかたも違うのね・・・とも。
 
とにかくナポレオン可愛いーー。
 
この作品が発表された15年前、まさか2000年にロボット犬とかが誕生するなんて思ってなかったですよね。時代って早いわーー。
 
ナポレオンみたいな、可愛いロボットなら一匹欲しいな。あの性格がいい。

(2001年)
   
初出/1986年1月
清水玲子 白泉社文庫「天使たちの進化論」より


 

 『ネオ・ドーベルマン』

【あらすじ】
 
百合花が飼っている犬は、実は人間とドーベルマンのキメラだった。
数年後。ドーベルマンのショナは、かっこいい男(&成犬)に成長するのだが・・・。
 
百合花の苦悩をよそに、犬と人間の生活をショナ本人は楽しんでいるように百合花には思える。
 
百合花を愛しつつ、メス犬にすることはする(笑)ショナと百合花の恋愛物語。
 
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【感想】
 

当然このショナは「月の子」のショナの原型です。
(というか、この作品自体、「月の子」の原型の気がする。)
「月の子」がお好きな方には、ぜひ読んでいただきたい一作です。
 
ドーベルマンと人間に自由に 変化する。ショナ本人はけろっとしている。重なる百合花の苦悩。
 
「犬のくせにそんなに色目使わないでよ」
「ドーベルマン男と くらすというのは ややこしい」
ショナにときめいちゃう(死語)百合花ですが。
 
百合花がいるのに、メス犬の所に通うなんて〜〜。(ショナらしいというか、何というか。)
 
あんまり目立つ作品ではないんですが、すっごく気になる作品です。

 (2003.11/3)
   
初出/1986年春
清水玲子 白泉社文庫「天使たちの進化論」より

 

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