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  「パピヨン」【分裂人間イオ】

 

 清水玲子作品、特に短編作品について書くのはむずかしい。一番書きたいことが「ネタばれ」だったりするので。
 この作品の舞台は宇宙空間に閉ざされた、宇宙船内の少年刑務所。
 
 アトラスの王子ナザレがデルタに滞在中に、デルタがアトラスに宣戦布告する。逃走中の間にナザレは事故で人を殺し(正当防衛)、この「450−A少年刑務所」に入れられる。
 そこで出会ったイオは、昔ナザレに仕えていたサラートに良く似ていた。
 
 プラナリア。分裂して生きる生物。プラナリアと同系統の種のイオは、事故から身を守るため、「2人に分裂 」してしまうのだが。
 
 分裂したイオとサラート。
「ここを出るのはどちらか1人にしようと。
 同じ生物が2人もいる必要はない。むしろマイナスになることが多いのです。
 一生同じ相手を愛し、同じ野望を抱く−−。
 もう1人の自分はジャマにしかならなくなる。
 それをどんなに隠してても、私達は互いにわかってしまう」
 
「‥‥じゃあ何のために今いるの?」
 いる筈がない。死んでもいい人間なんて。
 
 この場合、分裂する瞬間までは、イオとサラートは完全に1人の人間だった。それが2人になってしまった。遺伝も環境も人生も全く同じだったのだ。
 完全なるもう1人の自分。
 2人の人が同じことをやって生きていくのは困難だし、望みも考えも同じだと。ましてや独占欲がはたらいたら、奪い合うしかないのか?
 
 双子フェチにはたまらない1作です。
 
 プラナリアといいクマノミといい疑似ホタル(フォトゥリス)といい、うまく生物の生態をベースに使う方だよね、清水先生は。

 

  「パピヨン」清水玲子 /花とゆめコミックス
2002.2/11(月)

 

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