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 清水玲子の作品世界・2

  『複数の体にひとつの魂、ひとつの体に複数の魂』

清水玲子作品には双子が多い。純粋な意味の双子(クローンも含む)だけでも10組はいると思うし、複写された者や、同一人物というのも含めると、やたらめったら多い。
 
代表作『月の子』は、主人公が3つ子だし、『輝夜姫』は、主人公たちがクローン。ジャック&エレナシリーズも、ジャックが「天竜」をモデルとして作られた点では、「複写された者」だろう。
 
ごく初期の、『もうひとつの神話』では、実はアダムは、(この辺十数字削除)て作られたロボットであるし、『ノアの宇宙船』では、ジュニアは、「18才」のジュニアの体に、一時的に呼び起こされた、「14才のジュニア」の魂にすぎない。
   
 
清水作品のはかなさとその永遠性はこの「複数の体にひとつの魂、ひとつの体に複数の魂」というテーマからもあふれ出ている。
 
このテーマは、単に清水玲子が「双子好き」という、単純なものでは、ない。
 
個人の尊厳。人の魂(心)はどこにあるのか。人の想いはどこにあるのか。心は人の「遺伝子」からか。それとも「環境」か。  それが、クローンという存在を表現することで、何て疑問提起されているのだろう。そして、清水玲子特有の「スペア」という存在。「私は私である」その「個」ということ。
 
 人があこがれる、双子という存在が、何て見事に表現されているのだろう。
 
 しかも、双子そしてクローンそれに類する者を書くのに、何て漫画というジャンルは適しているのだろう。
 
 「小説」は漠然としているし、「実写」は不可能。
 「アニメ」も無理だ。以前、『月の子』の3つ子のキャストを考えたこともあったが、ギルや回想も含めると、のべ9人。どう割り振るんだろう。どうやっても、イメージが合わなくなると思う。
 
でも、「漫画」は。
 
漫画では、作者が自由に年齢や、表情を描き分けられる。同じ顔を何人作ろうと自由。そして、「ここが似ていてここが違う」というのを、何よりはっきり出せる。キャラが生きてくる。
 
例えば、『玉鈴』本人と『晶』は。年齢が多少違ったし、信念や育ちが違う。『玉鈴』は、中国を愛し、「中国のためなら何でもする」という強い信念があり、さまざまな人に愛された人だった。
 
晶は、日本人として育ち、クローンとしての叫びを持ち、「自分は玉 鈴ではない」のにそれを強要され、それでも、自分の立場に負けず、戦っている。
 
 確かに同じ顔。でも表情が違う。思想が違う。
 
 
「漫画」というジャンルに「SF」があるかどうかはわからないけど、「SF少女漫画」だと思う。

(2001年)

 

   「ジャック&エレナシリーズ」
     『ミルキーウェイ』 『竜の眠る星』全5巻
     『天使たちの進化論』


『月の子−−MOON CHILD−−』全13巻
『輝夜姫』1〜17巻以下続刊
『ノアの宇宙船』『もうひとつの神話』   (以上花とゆめコミックス)
 
(白泉社文庫版)
 『月の子−−MOON CHILD−−』全8巻
 『竜の眠る星』全2巻
 『ミルキーウェイ』『天使たちの進化論』
―――文庫「ミルキーウェイ」には、「ノアの宇宙船」も収録
文庫「天使たちの進化論」には 「もうひとつの神話」も収録
 

 

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