「瞳」
 
僕は君の目を受け継いで、自分の視界を得た。
僕は君の人生を受け継ぐことで、
君の遺志を知り、そして僕の生きる道をも、
探すことが出来た。
君を利用するつもりはなかったけれど、
君の歩むべき、あるいは君の歩むつもりのなかった、
人生を歩んだ。
 
君は僕ではなくて、僕は君ではなくて、
なのに僕は君になってしまった。
それは君の望みだったろうか。
 
僕には返す人生がない。
守が楓がサットンが本体に人生を返せたのに、
僕だけ君に目も体も返すことが出来ない。
僕のことを知る人も、君が死んだことを知る人も、
もういない。
君の人生を歩んでしまった僕は、
もう誰でもなくなった。ただ、独り。
 
この涙は誰の涙だろう。誰が流すはずだった涙だろう。

(Miller)

   

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