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       10.「輝夜姫」最終巻について。
 
 
   
多分、私は時間が欲しかったのでしょう。
ララの最終話を読んだ時、何でこんなに残酷なのだろう。
夢の中のように、残酷なのだろう、と。
(コミックスでは、まゆには春蘭という親友がいて、
 晶のそばにいたという描写がありますが、)
ララでは10年後の晶、ミラー、まゆたちがなかったので、
まゆは独りでさまよっていたのか、とか。
 
 
みんなどんどん人が死んでいって、幻想的に残酷で。
でも、最終話を読んだ時、「これが本当の私の
結論だろうか?」と思いました。
私は、このサイトで、リアルタイムに感想を書いていたのは、
『輝夜姫』についてだけでした。他は感想をねかせてました。
読み返しているうちに感想が変わることが、清水作品にはよくあって。
だから、『輝夜姫』についても今回、保留にしていました。
コミックスを読んだ後の感想がやっと書けます。
 
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   「還る」
 
守と楓とサットンが還っていった事は、
別の作品で、「のりうつった体」を返さないで
死んでいったキャラがいましたし。
ミラー、晶、碧以外のドナーは、本体をのっとって生き返ったのだし、
いつか本体に返さなくてはいけなかったのかもしれません。
 
守と楓は彼ら自身の中で納得して消えていったのでしょう。
還っていく寸前まで、3人とも未練はあったのでしょうが。
サットンは眠ったまま、消えていった。
 
「消えたことに、誰も気がつかない。誰も、誰も、誰も」
聡の死より、残酷な気がします。
 
大切なものを見つけられ、憎しみから開放されて。
それでも。
私は、守と楓に、いつまでもいちゃついていて欲しかった。
 
ババーニンとソギョンは、時代の流れの中、彼らなりに前向きに生きていく。
ベラミーは、大切な人の元へ、戻った。
人格として彼らの中に消えても、楓たちは本体の中のどこかで、
生きていてくれると信じたいです。
あのソギョンの笑顔に。
 
 
 
  「口止め」
 
碧に関しては、
「何で死ぬんだよ!!!」と思っていました。
でも、由に口止めしていたんだよね。
碧は晶を助けたかった。
でも、晶のために死んだと思わせたら、晶に酷。
だから、由に伝えたんだよね。
2の関係にもう1人が加わった残酷さ。
2の関係にもう1人大切な人が加わると、残酷。
 
実は私は、碧とまゆがくっつくのを切望していました。
まゆを幸せに出来るのは、碧だけ。
甘い妄想にすぎなかったけど。
生きて生きて生きのびてほしかった。
 
でもあのままだと、晶はヤられてた。
碧は自分のためにそうなってしまうのを、止めてほしかったんだ。
由に晶を助けてもらうことしか出来なかった。
由は、晶を選んだというより、碧の願いを、叶えたんだ・・・。
 
 
 
  「点穴」
 
由はまっすぐすぎて、晶か、碧か、片方しか見えないこともあるけど、
欠けることが出来ない存在、ひとつというのは正確ではないよね。
ひとつなら、失ってもわからないから。
由は倭に攻撃することは出来なかった。昂と約束したから。
でも、簡単に碧のあとを追ってほしくなかった。
碧を大切に思うなら、碧の分も生きてほしかった。
 
なんで高力士の「点穴」のチェーンが、
由の死のシーンであったのかなと思ってたけど、
あれは、ミラーに「晶を守ってくれ」って言う意味だったんだ。
由は晶に愛されてる自覚あったのかな?
 
先に死んであとでミラーから奪っちゃうのもズルイ気もするけど。
 
 
 
  「生き残った者」
 
晶は、泣いてばかりでしたね。
自分のためにどんどん人が犠牲になっていくのは、本人にもつらい事だろう。
でもその分も幸せになってほしかったけど、晶には無理なのかな?
ミラーが居てくれるより、由やドナーや様々な人が、
死んだり消えたりしたほうがつらかった?
ミラーやエドワードの存在も、晶を幸せには出来なかった?
 
罪を負った人の中には、その罪を悔い続けて生きる人もいるけど、
ずっとずっと泣いてて、幸せにはなれなかった?
 
清水作品では残された者、他の人たちが
自分の犠牲になって、それで生き残った者はたくさん居たけど、
泣いてその後を暮らしたと明記されたのは、あまりなかったよね。
何も知らないのはその人にとって不幸かもしれないけど、
知ってしまうのも、残酷だよね
晶はその重みに耐えられなかった。
晶に泣いてほしくないはないと、みんな願っていたのにね。
他の作品と、シンクロする。
 
ラストに限っては、晶も翁なのかもしれません。
泣いて病に臥せって、いつかかぐや姫が迎えにきてくれることを願った翁。
 
 
 
ミラーも、恵まれてたはずなのに、幸せになれなかったね。
晶がいつも泣いていたから。
みんな晶をほしがっていたけど、
その晶を手に入れたミラーも、幸せになれなかった。
サットンはもう居ない。本当の自分を知っているのは、晶とまゆのみ。
晶がそばに居て、ミラーなりに前向きに生きていくのにね。
あのポジションは、あらゆる意味でミラーしか、ありえないし。
悲しいというより、重いラストなのかもしれないね。
 
 
 
「まゆは独りで生きていったのか?」と、ララ掲載時には思っていました。
晶のそばに居られたのだろうか、と。
それとも本当に独りで悪夢の未来をさまよっていたのか、と。
だから、よかったよ。
春蘭という親友が居て、晶のそばに居られて。
独りじゃなかったんだな、と。
彼女がその後どんな人生を歩んだのかはわからないけど、
まゆには強く生きてほしいです。
幸せな人生を。
晶がミラーと結婚しても、エドワード見ても、
笑えるからもう大丈夫。春蘭という親友が居るし。
まゆは「月」(晶)から自立した「地球」になれた。
 
 
 
  「そして、地球」
 
それでも、次世代は、生きていく。地球の人も、生きていく。
ドームの中で。
月に依存していた地球や人類は月から自立して、
次世代が受け継いでいく。
ソギョンのように、地球でどう生きるか、懸命になって。
ほっとしました。
地球こそが、一番自立の道を、模索していたのかも、しれません。
  
 
依存、自立。それがこの作品の核なのかもしれません。
碧と由がいまいち自立できなかったのは残念だけど。
晶は泣いて暮らしたようだし。
 
まゆはさりげなかったけど、自分で自分の足で、自立した時点で、
この物語では、そのことでもう十分、意義があって、
歪んだループから脱したのかも、しれません。
だから、まゆがどうでもいいというより、
自立したからこそ、『輝夜姫』の物語でもう役を降りたのかも。
その後あまり登場しなかったのは、 彼女が彼女なりに、
自立して生きていったからかもしれません。
 
 
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一応書き連ねたけど、これだけが感想じゃ、もちろんないのね。
まだ言葉という形で、うまくあらわせない。

これからも、別の切り口で、時間をかけて、少しずつ、
書いていきたいです。

(2005.3/21)



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