『月夜水の詩』HOME > 『秘密』の小部屋』 > 「鈴木と青木」(秘密2001)

 
 

 
 

鈴木と青木(『秘密2001』)


 

つらい現実から真実から薪を守ろうとして、命を落とした鈴木。
つらい現実を薪に突きつけ、薪に真実を見せた青木。
どちらが正しかったのかはわからない。
結果論でしかないから。
薪を強いとあこがれた青木のやったことは、あまりにも荒療治で、
本作では薪は立ち直るが、
現実に薪の立場に状況にいる人が、
必ずしもそれで救われるとは限らない。
貝沼の狂気に落ちたかもしれない。
あるいは、4年前の薪には耐えられなかったかもしれない。
鈴木も青木も、どちらも、正しいとも間違っているとも言い切れないのだ。
 
薪を貝沼の狂気に引きずり込み、自分しか頭にないようにさせる。
自分のために狂わせる。自分のために壊れさせる。
自分のために自責の輪から抜け出せなくなるようにさせる。
自分のために自殺させる。
それが貝沼の目的だったかもしれない。
薪に強さを与えたのは、鈴木であり、青木であり、第九メンバーたち、
4年という年月だったのかもしれない。
完全に強い人なんていないのだ。人は強くて弱くて。
そんな『秘密』が好きだ。
 
 
青木が必死に現実と戦って、自分の真実と向き合って。
それでも青木が正しかったとは限らなかったりする。
そんな青木に、とても共感する。
 
薪を守ろうとして、薪に自分を殺させた鈴木は、
おろかかもしれない。残酷かもしれない。間違っていたかもしれない。
それでも薪が大切だったのだ。
そんな鈴木のやさしさももろさも弱さもあやまちも含めて好きだ。
 
 
メインキャストは正しくて、あるいは結果的に正しくて。
キャラの自己弁護、作者のキャラ弁護に終始するマンガは、
私はあまり好きにならない。
人はどんなにその人の正義を貫いたとしても
正しいとは限らないと知っているから。
テーマのためならキャラが正しいと言い切らせない。
そんな『秘密』が好きだ。
 
それゆえ清水キャラに共感できない人もいても。
現実は厳しいと思っている私は、
心地よく共感できるのだ。
 
人の弱さも強さも見せてくれる『秘密』。
弱いだけでも汚いだけでもなく、強さもある『秘密』が。

(2005.7/29)
 

「秘密―トップ・シークレット―」清水玲子 1〜2巻以下続刊
白泉社ジェッツコミックス(A5版)



TOP  HOME

Copyright:(C) 2005 夜子,All Rights Reserved.