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「人魚の姫と月の子考」


 

『月の子』って、とてもパラレルな物語ですけれど、
『人魚の姫』そのものも、とてもパラレルな物語なんです。
その「パラレルさ」が、人魚と人間のハーフの3つ子と
2人の男(人魚と人間)。
これから、誰がどんな物語を書こうとも、『月の子』ほど
『人魚の姫』を見事に描くことは、ないと思います。


 

魚の尻尾は少年の姿。
あるいはかりそめの中性。
真実の愛は女性になりたいということであり、
人間にあるいは人魚になりたいということであり。
永遠の命は子孫を残したいということ。
 
それらがとても複雑にからみあい、重複し。
私の文では、とても『月の子』がどこまで『人魚の姫』を
描いているかは、書きつくせません。
 
そして。『月の子』を読んでいない、これを読んでしまった『輝夜姫』ファンの方。
あるいは『輝夜姫』を読んでいない『月の子』ファンの方。
 
『月の子』が『人魚の姫』をモチーフにしたのと、
『かぐや姫(竹取物語)』の『輝夜姫』とは、
扱い方の質が違います。
全くの別物と思ったほうがいいのかもしれません。


 

まず。となりの国の王女ととても似ている人魚姫、というのは、
誰もが知っていると思います。
でも、人魚姫も大理石の少年の像を、とても大切にしていて、
その像は王子にとても似ていた。
「誰もが知っている『人魚の姫』」の物語は、
簡約化されたものが多いです。
私は直訳本、特に清水先生が5巻で紹介なさった、
 
「新潮文庫」の『人魚の姫童話集(1)』アンデルセン著、矢崎源九郎訳
 
を、ベースに書こうと思います。
そして皆さんにも、直訳本をおすすめします。



『月の子』を紹介する時、
「人魚姫ジミーと人間の王子アートの物語」とありますよね?
それは間違いではありません。
でも同時に、
「セツは人魚姫ティルトの王子」であり、
「セツが人魚姫であり、ベンがとなりの国の王女であり、ショナが王子である」
もしくは
「セツがとなりの国の王女であり、ベンが人魚姫であり、ショナが王子である」
と、大変複雑な構造をしています。
『月の子』はパラレルな『人魚の姫』をさらにパラレルに描いた物語といえます。
しかもそこに、3つ子とか、性転換とか、からんできます。
(人魚姫と、となりの国の王女を、双子にしたあたり、すごすぎ。)
 
 
『月の子』は、パラレルであるが故、
とても幻想的で、そして幻惑的なのだと思います。
何回読んでも本当の答えはない。解釈はいくらでもある。
そんな気にさせられます。
そして、私も解釈はひとつとは思いません。もうあきらめました。
清水先生はすごいかリスマ性をもっているって思います。
私の『月の子』の感想は、解釈の1つであり、
ここに書いた感想自体、私の解釈の1つにしかすぎず、他の解釈も持っている。
私の中でもひとつではありえない。
それを前提に書きます。
 
(ジミーとアートについては割合します。ストレートなので。わかりやすいですし。)



雨の中、ショナに助けられ、彼とであったセツ。
まるで薬を飲んで浜辺に打ちあげられた人魚姫のように。
【魔女との契約のあと人魚姫は王子に助けられる。】
 
でも少年の体だから愛してもらえない。
【人魚だから愛してもらえない。】
真実の愛を得たら人魚の女性になって子孫を残せる。
【真実の愛を得たら人間になって永遠の愛をもらえる。】

それが、セツのモチーフのひとつです。
 
ベンジャミン(となりの国の王女)を愛しているショナ(王子)を、
ただひたすら愛するセツ。
なんてセツは人魚姫なんだろう。
少年の体だから愛してもらえない。
女性となってショナに愛されたい。
【人魚という異形。】
でもショナから聞かされるのは、彼のベンジャミンへの愛ばかり。
【王子は人魚姫に愛している女性のことばかり話す。】
彼のそばに居られるのは自分がベンジャミンの姉妹だから。
【あの娘さんに似ているのは、おまえだけだよ。】
ベンジャミンのように女性になりたくて。
ベンジャミンが死んだ時、セツは女性になれるのに。



永遠の命を、子孫を望んだティルト。
死んだセツを生き返らせるためにティルトは人魚姫のように、
魔女と契約する。
「セツを生き返らせえる」ことと、「セツにショナの卵を生ませる」
こととひきかえに、「地球を滅ぼす」と。
【人間のような永遠の魂を望んだ人魚姫。】
 
生き返ったセツの目の前に居たのは、ショナだった。
ショナに助けられ、彼とであったセツ。
【王子は若い娘に助けられ、彼女にほほえむ。
 人魚姫に助けられたとは夢にも思わずに。】

 
ティルトの望みはセツにショナを愛させないと得ることは出来なかった。
舌どころか、自分の体を失い、人間のギルにのりうつり、
【人魚姫は魔女に人間の足をもらう。】
アートをひきつけるために、足に怪我をし、歩くたびに痛みを感じ。
【人魚姫の足は、歩くたびにまるでするどい剣でつきさされるよう。】
セツにとってティルトは大切なきょうだい。
【王子はかわいい子どもをかわいがるようにお姫様をかわいがっていたのです。
 ですから、お妃にしようとは、夢にも思っていませんでした。】

 
セツを見守るために、なんでもしてしまうティルト。
ただ愛する人の命と「永遠の魂」が欲しくて。
人魚から人間になってしまう。


  

ああ。これじゃ何のことだか、わからないね。
私はこことここのシーンがリンクして、とか、
自分の中ではわかっていても、文でうまく、書けない。
なんか上手く書く方法、ないかな。
とにかく『月の子』を読む時には、『人魚の姫』の「直訳」を読みましょう。
ますます幻惑的になるよ。
 
 
この文、シリーズ化したいなぁ。

  
 

『月の子−MOON CHILD−』  清水玲子
花とゆめコミックス全13巻/ 白泉社文庫版全8巻
 
 
『人魚の姫童話集(1)』アンデルセン著、矢崎源九郎訳 新潮文庫

(2004.10/1)


 


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