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清水玲子作品における狂気・3(『輝夜姫』)

「自我の確立/私は誰?」


 

本体のクローンとして、ただの臓器提供者(ドナー)として生まれた、
晶、碧、ミラー、サットン、聡、楓、守。
そのうちサットン、聡、楓、守は、臓器を取り出すために殺されます。
レシピエント(本体)の体と意識をのっとって復活するドナーたち。
本体のドン・ベラミーの体をのっとり、蘇った(よみがえった)
サットンの意識に残ったのは、
殺された憎しみだけだった――――。
 
もう元の自分には戻れない。
4人は本体と自分自身の狭間でもがきます。
「自分は誰?」と。「自分の存在は何?」と。
これも狂気のひとつの変則形だと思います。
 
 
かすかにしか覚えていない生前のキオクと、体が覚えている本体の感覚。
妙に計算高くなった聡。
妙に危なっかしくなったサットン。
銃など持ったことがなかったのに、銃器の取り扱いに詳しい守。
桂から自立して天才ぶりを発揮しドナーのブレイン(頭脳)になる楓。
あきらかに生前とは変わってしまった4人。
元の自分には戻れない。自分を見失う。そしてつかめる新しい自分。
 
 
アイデンティティーの確立。
肉体と意識。
自分というものを失って、それを再構築する。
お互い支えあって。
やっと自分を見つけられた。
それも狂気からの脱出のひとつの形だと思います。
「狂う」ということは、
アイデンティティーが、本人ではコントロール出来なくなる状態
なのではないかと、思います。
4人は自分をみつけることが出来た。以前とは違う形で。
むしろ以前よりもはるかに人を思いやれる人になれた。
ちゃんと自分の足で立ってる。
 
 
そして。
ピュアすぎて一途でもろいところのある由、晶、まゆといったキャラも、
少し狂気をふくんでいる面もあるように感じます。
 
 
『輝夜姫』は、一種の「自分探し」の話だと思うのですが。
「私は誰?」と。 

(2004.2/5)
 
「輝夜姫」清水玲子 花とゆめコミックス
1〜22巻以下続刊+ララ掲載分



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