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清水玲子作品における狂気・1
「JACK&ELENA」シリーズ

「狂わないロボット」


 

まず。私は多分、他の人とは、狂気に対する
認識というか、受け取りかた、とらえかたがちがいます。
うまく言えないのですが、以下の文を読んで、
なんとなくでも、共感してくださると、うれしいです。
 
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はじめに、「JACK&ELENA」シリーズの、セクスレスロボット、
エレナについて。
「有害で不必要な記憶」を消していくエレナ。
「人間なら‥‥死ぬか狂うかして逃げられるでしょうけれど‥‥
 エレナの「体」は絶対に生き続ける‥‥そうなるともう、
 「記憶」を「殺して」いく他ないんです。(『竜の眠る星』文庫版2巻P390)」
「死ぬことも狂うことも許されず
 隕石が落ちてもくちることなく。(『竜の眠る星』文庫版2巻P390)」
 
(まあ私は狂っても楽にはなれないと思う。
 自我と自意識のはざまで苦しみつづけるだけ。)
 
狂わない、というのは、他には狂うものがある、狂うことがある、
という前提ですよね。
「狂う」と「狂わない」「狂っていない」の境界線は、
あいまいです。
でもエレナはロボットです。
ロボットなのに、感情があります。意識もあります。
200年前のこともクリアに思い出してしまいます。
エレナは、「記憶」を「消していく」ことによって、
自分の思いも大切なキモチも殺していくわけです。
彼(彼女)の意志とは関係ナシに。
リセット。もしくは削除。
今のコンピューター世代だと、もしかしたら、
この作品は、ちがったものになったかもしれない。
もしくは生まれなかったかもしれない。
それでも15年前、この作品が生まれたのは、多分後世のかてになったはず。
 
ただ、この作品で、エレナはつらい記憶を消去し
ジャックを忘れそうになっていくのに、
天竜のことはずっと覚えていて、彼のいない世界に生きる意味を持てず、
200年もの間、彼を思い続け、40回も自殺をくりかえす。
(ロボット3原則も無視して。)
そのへんは矛盾かなーとか、思ってしまいます。
 
初連載でしたし、作品はすばらしく問題提起も多く、
テーマ性、メッセージ性があるので、
私としては、好きな作品です。

(2004.2/5)
   
清水玲子

『ミルキーウェイ』 花とゆめコミックス全1巻/白泉社文庫全1巻
『竜の眠る星』花とゆめコミックス全5巻/白泉社文庫全2巻



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