『月夜水の詩』HOME > 『深く語る。』 > 「ドナーの仲のミラーの位置」(輝夜姫) 

 
 

 
 

ドナーの中のミラーの位置 
(輝夜姫)


 

以前、「深く語る。」の第20夜の「ミラー」で、私は、ミラーのことを、
「王子様は当然」って思っていると書きました。
配慮が足りませんでした。それを訂正したいと思います。
 
メスは入れられていないものの、強制的に玉鈴のふりをさせられた晶。
自らの意思でなく本体の臓器を移植されて、
暗示をかけられ、本体としてふるまわされた碧。
臓器を取り出されれるために殺された、
サットン、聡、楓、守。そして殺され復活することさえ叶わなかった桂。
 
それにくらべて、ミラーは本体に目を移植されている。
ただのジュリアン・レドモンとして生きていけた。自由に。
ならばなぜ、英国皇太子としての道を選んだ?
 
答のひとつに近いことが、
12巻のミラーとサットンのやりとりにありました。
「何でおまえがオレ達「ドナー」のことを気にかけるんだ、ミラー」
「たしかにオレはあんたのように殺されはしなかったが
 オレのために「ジュリアン」が死んだ。
 これはジュリアンの遺志でもあるんだ。」
「オレは知りたいんだ。世界に名だたる要人のドナーが
 なぜあの島で「天人」に「イケニエ」として育てられたのか。
 一旦殺された「ドナー」の意識が甦ったのは、全くの偶然なのか。
 将来移植されるであろう「ドナー」の細胞が勝つのは
 はじめから「計算ずみ」ではなかったのか。
 もしそうならオレ達「ドナー」は意図的に世界の要人のもとへ
 送り込まれたことになる。
 だとしたら一体何のために」(『輝夜姫』12巻P32〜36)
 
ミラーは、ドナー制度のことを知ることも、出生の秘密を知ることも、
ジュリアンの遺志だと思っていました。
ドナーのことを調べる前の本体のジュリアンは、もしかしたら
ただの英国貴族として生きていくつもりだったのでしょう。
外人部隊に入隊していたくらいですから。(『輝夜姫』6〜7巻)
ドナー1人1人の本体を調べるのは、きっと大変なことだったと思います。
そして。ドナーたちに真実を知らせるために、神淵島へ行き。
失明寸前のミラーに目を受け継がさせた。
その遺志を継いでミラーがドナーのことを知るためには、
自らの運命を選ぶしかなかったのだと思います。
 
半ば 失明した人が目が見えるようになった。
それは大きな喜びでしょう。
ミラーは目を見開くたび、きっと見えることの大切さに気づくでしょう。
そんなミラーがジュリアンのことを忘れるわけ、なかったんですね。
 
ジュリアンの遺志を継いで、自らも選んで、皇太子になって。
他のドナーたちと助け合って、月の石の謎や運命にたどりつこうとしている。
 
ミラーは自分の本当の出生の秘密について、
ドナーとしてのクローンについて、命のゲームについて、
真実にたどりつけるのでしょうか。
大切なものを守るために、戦っていけるのでしょうか。
生きのびてジュリアンの遺志を継ぐことが出来るのでしょうか。
真実にたどりつけるのでしょうか‥‥‥。

(2003.12/20)
 
「輝夜姫」清水玲子 花とゆめコミックス
1〜22巻以下続刊+ララ掲載分


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