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「同一の2人」(パピヨン)

   

「パピヨン」は、「月の子」連載終了直後に発表された作品です。
「前編」「後編」各100P、計200P(しかものちに加筆あり)の、
ちょっと長めの短編です。
 
舞台は宇宙空間の少年刑務所。
アトラスの第一王子、ナザレ(女の子のようにかわいい顔をした)が、
隣国デルタ滞在中に、デルタがアトラスに戦争を仕掛け、
ナザレは、逃走中に、殺人事件を起こし(正当防衛)、
少年刑務所に収容される。
 
そこでかつての侍従サラートに似たイオと出会う。
 
守られる主人公が女の子じゃなくて、(女の子のようにかわいらしい)
中性的な少年ってところが、清水玲子らしいというか。
 
イオ(サラート)は、二つに体を分割され(ふつーの人は死ぬ。)るが、
元がプラナリアと同系統のイオ(サラート)は、
2人に分割して、難を逃れる。
 
確かに清水先生は「月の子」で3つ子を描いたけど、
分裂後のイオとサラートは、それまで同一人物だったから、
人生も経験も何もかも同じだったのに、2人に分かれた。
人は遺伝か環境か。
双子研究で一番問われるところだが、
イオとサラートは遺伝子も同じ、環境もまるで同じ。
(だって元が同一人物だもん。)
 
この場合、戸籍とか(惑星パルティータにあればだけど)
どうなるんでしょうね。
だってイオとサラートは元が同じ人物だった上に人間じゃない。
プラナリアと同系統のパルティータ人だ。
下手にDNA調べられたら、やばくない?
パスポートを一人分しか取れないってあったけど、どう生活していくのかな。
(まあ、偽造とか得意そうだけど。)
 
「はじめからきめていたことなんです。「ここ」を出るのはどちらか1人にしようと。
 同じ生物が2人もいる必要はない。むしろマイナスになることが多いのです。
 私達は、「もと」が同じ生物なんです。
 一生同じ相手を愛し、同じ野望を抱く−−。
 もう1人の自分はジャマにしかならなくなる。
 「それ」をどんなに隠してても、私達は互いに「わかって」しまう。
 (文庫版P191中略あり)」
このセリフ、すごく好き。
イオとサラートの後日談も見てみたかったですね。
それでもひとつの物語になりそうですね。
作中、サラートがイオをほめて、サラートに事情の知らない仲間が、
「何自分のことホメてんだ、イオ(サラートのこと)」
というのが、笑えました。
 
あと、イオがショナ的、サラートがアート的で、
当時クラクラしてました。
 
双子好きな方は、「文庫版・パピヨン」を読みましょう!!

(2003.7/9)

花とゆめコミックス「パピヨン」もしくは
白泉社文庫版「パピヨン」に収録
清水玲子

 
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